「佐助ー!!受かったぞっ!!」
校門に凭れている猿飛佐助に向かって走り寄ってくる一つの影。
「これで俺も佐助の後輩だなっ」
嬉しそうに纏わり付いてくる男を笑顔で迎えると、佐助はその頭を撫でた。
「良かったね、幸村。お祝いに何か食べに行こっか」
佐助の言葉に幸村はぱぁっと増々笑顔を輝かせると大きく頷いた。
「尾張亭のジャンボ餡蜜が食べたいぞっ!」
「はいはい、幸村の好きな物食べに行こうね」
くすくすと笑うと、二人は連れ立ってその場を去って行った。
校門に刻まれた文字は“私立戦国学園”と読めた。
春。
桜が散り、青々と緑が生い茂る頃。
佐助は机の上にお重を出してその頃を待っていた。
「佐助ーっ!」
昼休みのチャイムが鳴ってきっかり一分。待ち侘びた声が聞こえて廊下を見やる。
「お、幸村!今日も時間ぴったりだなー」
いつの間にかクラス、否学園の人気者になった幸村にクラスメイト達から次々と声がかかる。
今日もそれ等を巧くすり抜けると幸村は佐助の元へと辿り着く。
「今日のご飯は何だ?」
「ん、今日は旦那の好きなハンバーグとその他諸々」
「おぉっ!早く食べたいで御座るぅ!」
「じゃぁ今日は天気も良いし、屋上で食べよっか」
佐助の言葉に幸村は嬉しそうに頷くと、待ち切れないと言った風で早々とクラスを後にした。
キィ…。
佐助が手馴れた手付きでピンで鍵を開け、軋む扉を開けるとそこには居る筈のない先客が目に入る。
「あれ?」
「政宗殿で御座る」
二人で先客を見つめていると、その気配に気付いたのか男がこちらを向く。
「Hey、今日も親子揃ってlunchたぁ、相変わらず仲が良いな」
「誰が親子だ」
「政宗殿も昼ご飯で御座るか?」
「あぁ、もう済ませた所だがな」
佐助がぶつぶつと悪態を吐いてる内に、幸村は政宗に話し掛ける。
「またサボりで御座るか!」
「はいはい、旦那。伊達ちゃんの事は放っといてこっちも昼食にしよーね」
(その間合いは危険だから!変な事されたらどーすんのっ!)
口元をひくつかせてお重を見せると、幸村は踵を返して佐助に走り寄って来る。
「ちょっと伊達ちゃん、こっちは飯食ってんだから煙草吸うならもっと向こう行ってよね」
しっしと手で追いやると、幸村の世話へと戻る佐助に政宗は内心毒付いた。
(コイツが居る限り幸村には手が出せねェんだよな…邪魔な奴だ)
とは言え、勉強に置いてもスポーツに置いても佐助と政宗の力は互角。
出し抜くには後一歩決め手が無い状態に歯噛みする毎日。
「っつーか、こっちのが不利だよなァ」
思わず吐いた言葉に口元を隠すと、胸の靄をを吐き出すように、紫煙を燻らせた。
「もう、良いの?」
「うむっ!ご馳走様で御座る」
パンと、両手を合わせる幸村に「愛想無しでした」と佐助は微笑んでお重を片付けていく。
食事を終えると幸村はいつもの様に佐助に教わる為に教科書を開く。
「今日は午後一、何の授業なの?」
「苦手の英語で御座るー」
幸村の言葉に佐助はひくりと眉間に皺を刻み、二人が食事を終えるのを窺っていた政宗がここぞとばかりに
二人の間に割って入って来た。
「英語なら俺が得意だぜ」
「誠で御座るか?!」
期待に満ちた表情で政宗を見る幸村に、佐助はこっそりと溜息を吐いた。
(…不覚だったなぁ…確かに英語は伊達ちゃんの得意分野なんだよね)
「俺は中学までアメリカに住んでたからな」
政宗の言葉に幸村の目はより一層輝いた。
「格好良いで御座るなっ!な、佐助っ!」
「え?あ、うん、そーだね」
嫌々、と言った感じを露骨に押し出して佐助は相槌を打つ。
「Ahー、懐かしいなァ。で、何が解んねェんだ?」
「全部で御座る!某、文法が大嫌いで…」
「日本は文法ばかり教えやがるからなァ」
パラパラを教科書を捲ると政宗はニィと笑う。
「!」
佐助に嫌な予感が走る。
「文法ってのはなァ、一石二鳥では覚えられるモンじゃねェ。幸村、良かったら俺が毎日教えてやろうか?」
政宗の言葉に佐助は慌てた。やはり、嫌な予感が的中したようだ。
「誠に御座る―…」
「旦那、数学と一緒に英語も俺様が教えてあげるから」
ねっ。と念を押すように佐助はにこりと笑う。
「佐助、てめェより俺のが英語の点数良いだろうが!」
「伊達ちゃんは下心が見え見えだから却下っ!」
二人がぎゃいぎゃいと言い合いをしていると昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「あ。もうそんな時間で御座るか!佐助、また帰りに待ってるぞっ」
幸村はそう言うと慌ただしく走り去って行った。
残された二人はちらりと目線を合わせる。佐助は安堵の顔を、政宗は悔しそうな顔をして。
「勝負はここからだぜェ、猿飛佐助」
「望む所だよ、伊達ちゃん」
戦国学園は今日も騒がしい。
続き物なんで、区切りますー。
早く他のキャラも出したいです。でも全員は動かせないだろうな(文才ナイから。
姫争奪戦、始まりー☆