アンタの為なら何でも出来る。この胸にいつもあるのは―――





無敵の呪文




「佐助」
「ん?なぁに?」
「いや…何だか佐助が遠くに行ってしまう気がしてな」
 何、この子。可愛い事言っちゃって。
「何よ急に?俺様が居なくなったら旦那は困るでしょ?」
「う…む」
「それを解ってる俺様が旦那を置いてどっか行く訳無いでしょ?」
 そう言って微笑んでやる。俺が何処にも行ったりしないって…行けないって事を改めて自分に解らせる。
 アンタの存在が俺を繋ぎ止めて離さない。
「佐助…俺は…俺はお主の自由を奪っておる」
「え?何よイキナリ」
 ンなモン、ある訳ないじゃん。そもそも忍が自由でどーすんの。
「…佐助を俺の傍に繋ぎ止めて良いものかと迷う時があるのだ。佐助は佐助のしたい事があるのではないかと―――」
 一息に紡がれる言葉。嗚呼、ずっとそんな事考えてたの?
「俺様がしたくもない事する訳ないじゃん。旦那の傍に居る事が俺様のしたい事だよ」
 心からそう、想う。アンタの傍に居たいって。ずっと繋ぎ止めて欲しい―――って。
「む…誠か?」
「本当だってば」
 俺が笑うと安心する?本当は真剣な顔して言いたいけど、ンな事出来ないや。
 アンタがどう想うか解んないから。
「もし…俺を―――…俺に仕えるのが嫌になったら言うのだぞ」
 アンタに仕えられて俺は幸福だよ。愛する人をこの手で護れるんだから。なんて―――…
「旦那がもちっと給料あげてくれたら何一つ文句はないんだけどっ」
 ンな事言えないから憎まれ口叩いて返す。これでも精一杯なんだ。
「佐助ぇ…それはなかなか痛い所を突いてくれるな…」
 そんな困った顔見てるだけで俺は幸福になっちゃうんだよ。俺も困っちゃうね。
 ―――…自分の気持ち抑えんのに。
「佐助、これからも俺の背中を預けさせてくれ。…給料は変わらぬかも知れぬが」
「仕方ないなぁ。ま、旦那の背中を護れるのは俺様だけだからね」
「うむ!」
 そんな簡単に肯定しないでよ。凄く…嬉しいから。

 アンタの為なら何でも出来る。

 例え、この身が朽ちようとも。俺はアンタの為だけに生きてるんだ。





短っ!Σ(´д`|||)