参ったな。
こんなに好きになるなんて…。
「初めましてです」
そう、友人の隣でふわりと微笑んだ彼女は、一瞬惚けてしまう位綺麗で。
思わず言葉を返すのを忘れてしまう。
「佐助?」
不思議そうに覗き込まれて、漸く張り付いた声を絞り出した。
「あ、ごめんごめん。旦那には勿体無い位綺麗な子で吃驚しちゃった。初めまして、旦那の世話させてもらってます佐助です♪」
必要以上にべらべらと捲し立て、いつもと同じ様にへらりと笑うと、ちゃんはくすくすと笑った。
「幸にいつも聞いてます。何でも出来ちゃう凄い人だって」
「何でもは言い過ぎかなー。旦那のお馬鹿は長年かかっても治せなかったし」
「さ、佐助!」
出逢いはごく普通でありきたりな、友人に恋人を紹介されるって奴。
「あれ、ちゃん?」
「あ、佐助さん。今帰りですか?」
「うん、ちゃんは旦那待ち?」
放課後、誰も残ってない教室。旦那の席にはちゃんの姿。
「一人で待つのも暇でしょー?」
本当にちょっとした親切心だったんだ。
「佐助さん帰るところだったんでしょ?そんなの悪いですよー」
彼氏持ちの、予想通りの答え。「でも…」と続く彼女の言葉に一瞬、反応出来なかった。
「正直言うと、ちょっと暇だったの。幸、部活終わるの遅いから、付き合って貰えると凄く嬉しい、です」
ふわりと笑った彼女は出逢ったばかりの笑顔と変わらなくて、凄く綺麗だった。
少し、鼓動が速くなった心臓の音を隠して、そのままごく自然に隣に腰掛ける。
「俺様で良かったらー♪」
それから旦那が帰って来るまで他愛の無い話をして。
解ったのはちゃんは結構人懐こい子だって事。
それに、結構天然も入ってるみたいで俺の周りにはいなかったタイプの子だって事。
それに…本当に旦那の事好きなんだって…事。
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