木の上から真っ逆さま。常人なら即死コース。
「ん…」
「うーん、流石の俺様も人抱えてちゃ避けんのに精一杯だったわ」
ちゃん、大丈夫ー?などと軽い口調で、体を揺さぶられて。
「あぶ…あっぶねー!今行っちゃ行けない世界で腹立つ光景見えたじゃねーかよ!!」
「へぇ、どんな?」
「三途の河の向こう岸で死んだじーちゃんが俺を指差して大爆笑してやがった」
「…それはそれは…初めて聞く体験だわ」
けらけらと笑う佐助の襟元を引っ掴んで体を起こすと、頭と腰と足に鈍痛。
「いっ…」
「大丈夫?大体は庇い切ったと思ったんだけどなぁ」
そう言う佐助をよくよく見れば、所々擦り傷とかあったりして…。
「あんたの方が大丈夫なのかよ?」
「俺様、天才だから何て事無いよ」
「Hey、和んでる場合じゃねェと思うんだがな、お二人さん」
ザリ、と土を踏む音と共にやたらエロ…いや、良い声が頭上から落とされる。
「あちゃー、やっぱ見逃してくんないかぁ」
ニタリと笑ったかと思うと、佐助はいきなり苦無を突き付ける。
よくよく見ずとも解った。佐助の相手をしているのは、あの独眼竜―伊達政宗だった。
「猿、手前ここで何してやがる。しかもそんな別嬪連れでよ」
「竜の旦那の好みかい?」
「Ha!無駄口叩きやがって!」
うん。何か色々喋ってるけど、今二人共戦闘中なんだからさ、口は閉じた方が良くね?
あまりにも目まぐるしすぎて、常人の俺には細かい事は何がどーなってんのかさっぱりだけどさ。
「おっと!」
ギチィ!と金属のぶつかる音がして、俺がやっと二人を認識した時には佐助の喉元に宗様の刀が当てられている所だった。
「勝負あったな、忍。少しでも変な気起こしてみろ、その首…飛ぶぜ?」
ニヤリと笑った宗様は思わず見惚れる位恰好良かった。
「ちぇ、しょーがないか…ちゃん、またね」
は?また?何言ってんだ?とか思ってたら目の前から迷彩が掻き消えていた。
「…え」
「Shit!逃げやがったか」
マジで?この状況で俺一人置いてくってか!!ありえねー…。
今まで佐助が居た所を凝視していると、チキと刀を納めた宗様とバッチリ目が合ってしまった。
「Hey、Who are you?」
「I’m just a passer. Never mind」
「お前、異国語が喋れるのか」
気にするなって言ったよね、俺?それとも英語間違ってましたか?
「俺が訊いたのはWhatじゃなくてWhoなんだがな」
あ、やっぱり間違ってましたか。…てか別にWhoでもWhatでも一緒じゃんよ!俺、答える気ないんだからさー。
なんて思ってたら、何を思ったのか宗様がいきなり人の事を俵担ぎになさりやがった。
ん?ってかあれ、何これデジャヴ?
この世界では人を俵担ぎにすんのが流行ってんのか?って、そんな馬鹿な。
「えーと…何をなさってやがりますか?」
「お前それ、敬語可笑しくないか?…まぁ、良い。ちぃと付き合ってもらうぜ?色々と聞きたい事があるんでな」
「…それってやっぱり俺の意思意見は無視ですか?」
「Of course!よく解ってんじゃねェか」
…皆ちょー俺様だよなぁ…あ、殿様か。それならしょーがない(佐助も一人称俺様だしな)
「で、これから何処へ?」
「青葉城…俺の城だ」
…マジですか。何か凄く嫌な予感するんだけど、拒否権はないしな…。仕方がない、腹を括りますか!