宗様と関係を持ってしまった日(こう言うと生々しいな…)から三日。
猫耳のお陰か、遠くから荒々しく近づいてくる足音を感知し、慌てて耳を消す。
「、入るぜ」
気まずくてあんまり顔を合わせない様にしてたら、それが気に障ったのかわざわざ自室を訪ねていらっしゃったようだ。
「…何か御用ですか?」
「A task?そうだな…どっちかと言えばQuestionだな」
「何でしょう?」
「お前、この三日俺を避けてたよな?」
そりゃあんなに露骨に避けてたら誰でも気付きますよねー。でも意外だったな、もっと早く来ると思ったんだけど。
「避けてたって言うか…体調が優れなかったのも事実ですよ」
「"も"って事は避けてたっての"も"あるんだな?」
ちぇっ、重箱の隅突く様な事言いやがって。姑か!
俺が何も言わない事に宗様は眉を顰めて、俺の正面に胡坐をかいた。
「何がそんなに気に入らねェんだ?」
「…気に入らないって言うか…そもそも、俺の意思なんて無視だったじゃないですか」
宗様が勝手にそんな雰囲気になって、そのまま済し崩しに事に及んだんじゃないかよー。
自分でも驚くべき事に、嫌悪感なんて物は全然無かったけど…何て言うの?遊ばれてんじゃねーの?って気持ちがどうしても拭い切れないんだよなぁ…。
気持ちなんて言ってくれなきゃ解んないしさ。そもそも宗様が俺に好きとか、そう言う感情があるかって訊かれたら多分無いと思うし。
興味本位とか、まぁそう言う類の気持ちだったって俺が感じるから、遊ばれてると思うんだよな。
かと言って、じゃぁ俺は宗様の事を好きなのかと訊かれたら返答に困るんだけど。
勿論、嫌いじゃない。寧ろ格好良いなぁとは思うし。キャラとしては好きだけど…この世界に居る以上、"キャラ"として見てないし…。
「…俺なんか相手にしなくても政宗様なら引く手数多でしょうに…」
「STOP」
目も合わせずにたらたら文句を言っていると、不意に顎を上げられ、真剣な目をした宗様と視線が絡まる。
「その言葉遣い止めろ」
「…ごめん」
ちょっと、卑屈すぎたかな。でも俺は胸のモヤモヤとか全部飲み込んで笑顔で接するなんて、絶対出来ないし、したくない。
「…政宗さ…」
「Ah?」
「―――…何で俺を…抱いたの?」
俺の言葉に宗様が目を見開いて、そのまま時が止まった。
いや、ちょっと、そこで止まられても…そんなに変な質問でもないだろ?!
「別に好きだから、とかで抱いたんじゃないだろ?」
何とも居た堪れない空気に、言葉を重ねると、いきなり手首を掴まれた。
「っ、痛っ」
「お前………っ、もう良い」
盛大に溜息を吐いて、宗様は立ち上がった。一体何だって言うんだよ。
「…あぁ、七日後に小せェが戦がある。お前も連れてくつもりだから覚悟しとけ」
パシンと小気味の良い音を立てて障子が閉じられた。
…何なんだよ?俺、何か気に障る様な事言った?しかも何、最後の科白。
七日後に戦って何?急すぎじゃね?!もっと早くに言えよ…。
あぁ、もうっ!苛々する!!何も言われないって本当に嫌だ。
モヤモヤが更に増した胸は、重苦しくて、今口を開いたら泣いてしまいそうで…。
固く唇を噛み締めて、ただ拳を握る事しか出来なかった。
…何だか無償に哀しかったんだ。