スラリと襖を開ければ、うお、広っ!多分だけど十五畳位?
こざっぱりして、日当たり良好のなかなか良い部屋だ。やっぱ和室って良いね!フローリングなんかより温かみがあってさ。
「う、わー!良い部屋!!ほんとにここ使って良いの?!」
小躍りでもしてやろうかって位の勢いで、部屋に入ると佐助が背後で笑う。
「何だよ」
「いや?そこまで喜ぶとは思ってなくてさー。ちゃん、可愛いね♪」
…誰ですかこのチャラ男は。
俺が言うのも何だけど、タラシだコイツ!女の子が髪型変えたらソッコー似合ってるよ、とか可愛いね、とか言うタイプだ絶対。
「…俺、男だし。男に可愛いとかマジネーヨ」
ヤベ、半眼しすぎて瞼ツリそう。ジト目で見てたら、形の良い眉毛が困った様に寄せられる。
…あれ?困った顔はなかなか可愛いぞ、こいつ。普通に笑ってたら恰好良いのに困り顔は可愛いとか…顔良い奴って得だな。
「何、情けない顔してんだよー」
ピンっと眉間を指で弾いてやると、それを掴まれる。意外と強い力に戸惑っていると、フと佐助と目が合った。
瞬間、頭の中で警告音が鳴る。ヤバ、い―――…この目は…。
反射的に腕を引くと、まるで引き寄せられる様に佐助の体が俺へと傾いて…。
「ちょっ、おま―――っ…!!」
「痛…」
男にしては少し高い声が、体の下で呻き声を上げる。うん、痛かったよね、ごめんね。
思った以上に勢いがついてしまい、咄嗟に頭を抱え込む暇すらなく俺達は畳に倒れ込んだ。
「ごめんね、大丈夫?」
「大丈夫じゃねー、頭強烈に打った…これ以上馬鹿になったらどーしてくれんだよ」
顔を覗き込むと余程痛かったのか、涙目のままに睨み付けてくる。でもさー、ごめん全然怖くないよ。
「それ以上馬鹿になれる事の方が驚きなんだけど」
くすりと笑いながら頭を撫でてやると、「性悪忍び」と怒られた。でもね、本当にそう思ってたら言えないって。
「もー、お前いきなり何すんだよー。とりあえず重いからちょっと退いて?」
遠慮がちに肩を押す手を握り込むと、ビクリと躯を硬直させて視線を泳がせる。
「さ、すけ…?」
「もう男を覚えちゃったの?」
わざと顔を近付けて問い詰めれば、大きな瞳がこれ以上無いって位見開かれる。
「な…んで…」
「ん?だって俺様忍びよ?その気になれば何でも知れる。例えば―――…」
ピクピクと小刻みに震えている耳に唇を寄せると、面白い位耳がヘタる。クスクスと笑いが漏れる。
「耳が弱いって事とか♪」
「ひァっ」
薄い部分を食むと、高い声を上げてギュっと目を瞑るちゃん。うーん、やっぱ可愛いなこの子。
黙ってたら美人系、からかったら可愛い系、喋ったら…悪餓鬼か。
「さ、佐助、とりあえず退いてもらえるかな?」
「何で?早く猫耳消したいんじゃないの?」
ニヤリと笑えばちゃんの顔が一瞬にして蒼白になる。いやぁ、見てて飽きないねぇ♪
「なっ、何でお前が知ってんだよっ?!政宗にしか話してない、のに………お前、あんな所まで…っ」
「いやぁ俺様って優秀な忍びだからさ。ついつい情報収集しちゃった♪」
「いやいやいや、それ有り得ないだろ。情報収集は癖の様なもんですよってか?!嘘くせぇー!!」
…ちゃんの言ってる事、たまに訳解んないんだよねー。でも今はそんなの関係ないし、とりあえず無視。
「そうは言うけど、現に俺様の情報に間違いは無いでしょ?…どうするの?」
そう言って柔らかい髪の毛を撫でて、必殺★俺様の流し目でも食らわせてやれば…ほら、ちゃんの顔真っ赤。
「ど…どーするって言われたって…」
さて、もう暫くこの可愛い子で遊んじゃおっかなー♪